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今日も旅ゆく

好きなもの、思い出すことなど@express_shinano

焼肉と親睦会の親和性

思い出すこと

半年ぶりに家族と焼肉に行ったので、焼肉にまつわる微妙な思い出について書きたいと思う。

大学四回生の秋、所属ゼミ全体の親睦会があった。教授と三回生〜院生まで幅広い年代が集められた。会場は焼肉屋だった。

最初の席はくじ引きで決められる。コミュニケーションに消極的なわたしにとっては地獄のようなシステムだった。一つ下の代が我々の代の二倍近くの人数いたこと、その中にかなり痛めな女の子が数人いたのもさらに憂鬱さを加速させた。

特にすごい女の子がいた。以前の親睦会のとき、自己紹介で「食いしん坊です!あー!とにかくお腹空いちゃいました!早く食べましょうよ〜!」と言ったのである。自己紹介は全体の半数も終わってなかった。場の雰囲気はめちゃくちゃ微妙になった上、モリモリ食べちゃう女の子アピールをする女が嫌いなわたしはその子を特にヤバいやつだと感じた。食いしん坊なのは構わないから黙って食べてくれ。この子のそばになったらストレスで死んでしまうかもしれない。そう思った。

クジを引き「まさかあの子の隣にはならないよね。お肉食べられるから相当テンション上がってそうだわ」と友達に言って指定された席に座る。隣を見る。特にヤバい女の子が座っている。あっ、お疲れ様ですー!自分の引きの強さを呪った。

結局そのテーブルには、院の先輩、超絶ナルシストの同期のゼミ長、キラキラ後輩女子、口数少ない系後輩、食いしん坊女、わたしが座ることになった。友達が目で御愁傷様と言っていた。泣きたかった。

先生の挨拶も終わりいよいよ焼肉が始まる。案の定、食いしん坊女は「にくぅー!にくぅー!最近自分肉、食べてないんですよ!早く焼けないかなあ!」と暴れ始めた。心の底から知らんがなと思ったが、わたしの予想が当たっていてちょっと微笑ましい気持ちにもなった。

肉を焼いていたのは院の先輩とわたしだった。ゼミ長に先輩でなくお前が焼けと目配せする。ナルシストなので「えっ、しなのさん…俺の顔になんかついてる?」という。焼けや。三回生はまだいいとして、先輩が焼いてくれるのを何故見ているのか。
そして、微妙な無言の時間が続く。

先輩後輩とはこういう機会でしか顔を合わせることがなかったので特に仲が良いというわけでもなく、気さくな会話が特になかった。当たり障りのない話題は開始早々に終わっていた。響くのは肉うまい〜!肉最高!という後輩の声だけ。ヤバい。親睦を誰も深めようとしてない。ヤバいと思った。何か話題を振らねば。
先輩と後輩三人に声をかける。
「三回生はそろそろ卒論のテーマ決めてる時期ですよね?先輩もこの時期には固まってました?みんなは決まった?」
「…えっ?」
わたしの滑舌の悪さと焼肉の音で会話が届かない。ヤバい。
「卒論の、テーマ、決まった?(大声)」
キラキラ女子が声を拾ってくれたらしく、笑顔で答えてくれた。
「今昔と\ジュウウウウウ/「お肉おいしー!」?」
周りの音で答えが中途半端にしか聞こえない。お肉の感想を間に挟んでくる。わからなかったので、とりあえず愛想笑いを浮かべてみる。しかしどうやら質問を返されていたようだ。答えようがない。先輩も聞きそびれていた。間をかなり取ってえ?と聞き返して気まずい感じになる。周りがめちゃくちゃ盛り上がってるせいで声が相手に届かぬまま潰されていく。

「先輩は就活\ジュウウウウウ/ですか?」
「うん、就活?あっお肉できたからお皿に入れるね?あっ、内定…内定はだいたい\ワー/の時期だったよ」
「……?あっ、院はどんな感じですか?」
「楽しいけど\スゴーイ!/」
親睦もクソもなかった。
結局同じテーブルになった人とまともな会話ができなかった。肉を焼くタイミングやその分配にも気を遣った。みんな声が小さかったしコミュニケーションの努力もなかった。服が煙にまみれて悲しい気持ちになった。めちゃくちゃ疲れた。

その会で得たものは、焼くという作業と、音が発生する(そして特にこの場合は大衆の焼肉屋のため周りもうるさかった)焼肉は、親睦には不向きだなという気付きだけだった。頼むもの焼く食べるにお互いすごく気を遣うし、お肉を見ると興奮するやつもいる。そして会話を成立させるのに声を大きくしないといけない。

焼肉と親睦会の親和性は低い。親睦会で行く一番の理想のお店は飲み放題付きのコース料理が出てくるところだと思う。それとゆっくり話すには、少し静かなお店がいい。