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今日も旅ゆく

好きなもの、思い出すことなど@express_shinano

新宿駅の話/東京紀行①

 

東京に行くのは約7年ぶりだった。

7年前は新宿駅を母と二人で彷徨い、西口では目が死んでいるサラリーマンの波に飲まれた覚えがある。

新宿駅がいかに複雑かということを、当時は全く理解しないまま丸腰で挑んだため完膚無きまでに敗れた。駅員さんに3回道を尋ねたのに目的地に辿りつけず、結局飛び跳ねてティッシュ配りをするヤバそうなお兄ちゃん(伝われ)に助けてもらった。

 

しかし今回は違う。今回こそはスマートに新宿駅を攻略するぞと「迷うだろうから新宿で待ち合わせはやめようや」という友達に、雪辱を晴らしたいから協力してくれ今回は大丈夫だからとお願いして、新宿駅南口で待ち合わせすることにした。

 

地下鉄丸ノ内線の改札を出て、出口に向かうといつのまにか東口の方に出ていた。

7年前の記憶がありありと甦る。確かここから母との長い彷徨が始まったのだ。キャリーケースを引っ張り歩きまわった果てに、人生がどうでもよくなってなぜか途中で別に買う必要もない下着を買ったことも思い出された。

 

とりあえず地下に潜ればどうにかなるやろと、地下に潜る。突き進むと改札にぶつかった。これ以上は先に進めない。横に抜ける道もなさそうだ。地上に戻ればなぜかさっきと違うところに出る。南口に行くには地上で余裕と言っていた奴は誰だ。ここがその地上なのかもわからない。頭を抱えた。

東口、中央東口、東口広場階段、JR西口、京王西口、中央西口、東南口、新南口、サザンテラス口…そのほかにもまだまだ出口がある。日本中の出口でも集めているのか。もう自分の理解能力を超えていた。

 

友達との待ち合わせ時刻が迫る中、就活時、梅田で散々迷ったことを思い出す。

就活生だったとき、大阪梅田駅でも地下を彷徨い、面接に遅刻しかけたことが何回もあった。阪神百貨店の前を全力疾走したこともある。何度も人生を棒に振りかけた。(必死に走って間に合った面接で入社が決まり、そのあとメンタルをボコボコにやられて人生を棒に振っている気がしないでもない)

 

結局のところ、傲慢なのだ。何度痛い目を見ても、私は都会をなめたままだった。

自分の乏しい経験だけで「ま~どうにかいけるやろ!」と思っていた自分がいかに傲慢だったことを再度思い知らされた。博多駅も京都駅も優しく、それに甘えていただけだったのだ。

 

先に着いたらしい友達から電話が入り「迷ってるならとりあえずもう動かないで」と言われる。今いる場所を尋ねられてもおおよそのことしかわからない。何か目印になるものはないかと話しながら歩いていると見覚えのある場所に出てきた。南口だった。

「南口に着いた…!」

私にとっては感動的な出来事だったのだが、当然友達はあきれ顔だった。どれくらい迷ったかの話をすると「だから言ったのに」と言われる。ぐうの音もでない。

 

友達に連れられ道路の方へ出る。なんと道路を挟んで目の前に新宿駅がもうひとつあった。驚きのあまりひっくり返ってしまった。

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なんてことだ。魔窟がまた広がるのか。

新宿駅は無限に拡大され続け、出口も際限なく増殖して、今以上に慣れない地方出身者を路頭に迷わせるのだ。私のような思いあがりの田舎者を地下に飲み込んでしまうかもしれない。そしてそれを養分にまた新宿駅は大きくなる。永遠にだ。利便性は追求され続け、発展は止まないのだろう。人も集まり続ける。

その繰り返しの果てに人の全てを見た新宿駅は意思を持つようになり、やがて人をみんな飲み込んでしまうのではないか。

 

雑踏の中でそんな馬鹿げたことを思った。

飲み込まれたら私は一番最初に消化されるなと神妙な顔をしていたら、友達に「あの女の子あんたと同じリュック背負ってるよ」と言われ、空想は終わり、新宿駅は利用者を吸い込み吐き出しながら、変わらずそこにあった。