今日も旅ゆく

いったりきたりの旅の記録

感傷の鴨川/京都紀行1(令和5年7月/京都府京都市)

 人生がままならないので、京都に行くことにした。

 7月の3連休前日の金曜日。代休を午後にねじ込み、無理矢理に仕事を終えたその足で、博多駅から新幹線に乗った。京都に行くのは2月以来、5ヶ月ぶりだ。

 大学時代の4年間(2年間は市外だったが)を京都で過ごしているのもあって、旅行に行くというよりは、京都は「ちょっと遊びに行く」ような感覚である。

 博多から3時間弱、18時前に京都駅に着く。京都駅は相変わらず人でごった返していた。私が学生だった頃より人が増えているのではないかと思う。そのまま地下鉄に乗り換えて、四条駅に降りる。

 今回の行程を考えたときは「そういえば祇園祭か」というくらいの感覚だったが、到着した日はちょうど宵々々山で、ホテルの前には鉾が立っていた。街の中心部のホテルを取ったとはいえ、まさか目の前とは。明日は朝からあちこち行く予定を立てているので、元気があれば宵々山を楽しもうかな、などと呑気に考えていたが、やはり実物を前にすると、明日は絶対に無理をしてでも楽しもうなとなってしまう。

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 雰囲気が良い。良すぎる。

 ただ、今日は鴨川に行くことを目的としているので、鉾の見物はそこそこに、再び地下鉄に乗って、今度は今出川駅で降りた。

 今出川駅から、出町柳方面へ歩く。

 バイト先が神宮丸太町、家が堀川今出川だったこともあって、よく使っていた道だった。学生時代にもあったお店、変わってしまったお店、何もかもが懐かしく、情緒が既に取り返しのつかないことになってきていた。そのままの勢いでファミマでビールとサラミを買う。

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 賀茂大橋から北側を臨む。鴨川デルタでは青春が煌めいているのが見えた。デルタのどこかに腰掛けてビールを飲もうと思っていたが、大量の青春に中ると立ち直れなくなりそうだったので、結局出町橋を少し越えたところで場所を見つけた。

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 夜が降りても、夏の暑さだった。ビールがしみる。せせらぎと言うには少し大きい川の流れに耳を傾けながら、夜風に当たる。

 すぐに一缶を飲み干してしまい、川沿いを三条付近まで下ることにした。

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 京都という街は恐ろしい。学生時代の記憶がそこかしこに、それとなく紐付いていて、ふとした瞬間に私を刺す。

 ここを離れて10年近くが経つ。何も変わっていないつもりでも、20代前半の驕り、何も知らなかったあの頃から、だいぶ隔たってしまった。感傷を抱えて歩くには出町柳から丸太町は遠すぎる。

 何も考えずに将来の選択をして、結局最初に務めた会社は逃げるように辞め、無職というモラトリアム(再)を過ごして、今度は再就職した先で、想像していた以上に働いている。

 10年前の私から見れば、こんなはずではなかったと思うのではないだろうか。少なくともこの年で結婚していないとは思っていなかったし、こんなに働いているとも思っていなかった。

 ただ、「こんなはずじゃなかった」が必ずしも後悔とは限らないことを、最近学んだ。全てがベストではなかったかもしれないけれど、選んできた道があって、そこを通らなければ会えなかった人がいる。見ることもなかった風景がある。

    丸太町まで到着した。バイト先を確認したら、まだ健在で少し泣きそうになった。

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 ビールを買い足して、またしばし川辺に腰掛ける。

 人生はきっと折り合いの連続なんだろうと思う。現在に地続きで過去と未来があって、選択と折り合いを繰り返して、生きていくことになるんだろう。10年後も似たようなことをしているのか、また違う人生を歩んでいるのか、まだ想像がつかない。きっとキャリアと結婚についてはこれからしばらく悩むんだろう……が、自分の人生に責任は持てるようにしたいなとは思った。

 三条付近まで下りると、突然人が増えてきた。等間隔カップルを久しぶりに見る。学生の頃「ここは昔処刑場だったのに」とわざわざ嫌なことを言っていたことを思い出す。

 人が増えてきて嫌な気持ちになってきたところで、スマホが鳴る。確認したら職場からのLINEだった。たいした内容でもなく、今じゃなくて良いのにという気持ちだ。

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 感傷もかき消えたので、宿に戻ることにした。三条京阪駅から地下鉄に乗り、烏丸御池駅で降りる。ホテル前の山鉾の提灯が美しかった。

    明日の朝は志津屋のイートインでカルネを食べようかなと思い、ホテルへ帰着。1日目を終えた。